4.「業務に従事する者」と「従業者」について

専任取引士の設置母数である「業務に従事する者」

まず、宅地建物取引業法第31条の3において、専任取引士の設置義務を定めています。更に、宅地建物取引業法施行規則第15条の5の3(法第31条の3第1項の国土交通省令で定める数)において、その設置人数について、以下の通り定めています。
「当該事務所において宅地建物取引業者の業務に従事する者の数に対する宅地建物取引士の数の割合が5分の1以上となる数とする。」(一部略)

つまり、専任の宅地建物取引士の設置基準(母数)となるのは、「宅地建物取引業者の業務に従事する者の数」です。
「宅地建物取引業者の業務に従事する者」5名に1名以上の割合で、専任取引士を設置する必要があります。

従業者証明書の発行対象・従業者名簿の記載対象である「従業者」

一方で、「従業者証明書」「従業者名簿」については、宅地建物取引業法第48条(証明書の携帯等)において、

>従業者証明書については、
「~従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、~」と、

>従業者名簿については、
「~その事務所ごとに、従業者名簿を備え、従業者の氏名、~」と記載されており、

ここでは、「従業者」という考え方が基準となっています。

「業務に従事する者」と「従業者」は、別の考え方

注意する必要があるのが、専任取引士の設置基準となる「業務に従事する者」と、従業者証明書や従業者名簿に記載する「従業者」とは、別の考え方で、厳密には、対象者の範囲が異なるという点です。

「業務に従事する者」は宅建業の解釈にて下記のとおり範囲が決められています。

なお、大手不動産会社のほとんどは宅建業以外の業務の取り扱いをしているため、宅建業のみ従事している者は少ないです。
この場合の考え方として、顧客の立場から客観的に見て宅建業に従事していると判断されるような従業者は、「業務に従事する者」に該当すると判断されます。

一方、「従業者」はより広範囲の人が対象となっています。

※ここでいう「一時的に業務に従事するもの」の「一時的」の定義は明確に決まっていません。(例えば、〇か月間までの業務までが「一時的」に該当する等)
そのため、個別具体的な話になると関東地方整備局へ相談する必要があります。

基本的に、「業務に従事する者」は、臨時職員等は除きますが、「従業者」は、臨時職員等も含む考え方なので、、「従業者」の方が対象範囲が広くなっています。

ただ、大手不動産会社では、取扱いを分ける管理負担を考慮し、大は小を兼ねる発想で、<専任の取引士の設置基準=より範囲の広い「従業者」と設定>し、管理しているケースがあります。

なので、この点の見直しをすることで(厳密に「業務に従事する者」の数を算出する)、専任取引士の設置基準となる母数を減らすことができる可能性があります。

ちなみに、千葉県では「業務に従事する者」「従業者」の対象範囲を整理した表があります(公開資料)。

<千葉県:「業務に従事する者と従業者の該当範囲の違い」>

https://www.pref.chiba.lg.jp/kenfudou/tetsuzuki/takuchi-menkyo/documents/2015_13x.pdf

※千葉県の資料ではありますが、関東地方整備局クサノ氏にも、本内容と同見解である旨確認済。(2019年9月照会)

3.従業者証明書について

宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させ、従業者名簿を作成する必要があります。
従業者証明書を携帯させなければ、その者を宅建業に従事させてはいけないことになっています。

従業者証明書を携帯させるべき者の範囲は宅建業の解釈にて下記のとおり定められています。

※非常勤の役員や一時的に宅建業に関わる事務を補佐する者も加わるので要注意。

ただし、過去に役所と整理した上で非常勤役員に従業者証明書を発行していないケースも考えられるため、
各社の運用を確認してください。

(従業者証明書のフォーマット)※国土交通省:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001487653.pdf

 

3.更新申請中の対応について★更新申請完了後に先方へ案内★

宅建業の更新申請は、その申請書類の多さから、有効期間満了後も引き続き審査が続けられる可能性があります。

しかし、宅建業は法定書類が多く、そのほとんどに許可番号や有効期間が記載されています。
これでは顧客に誤解を与えかねないため、管理担当は更新申請が完了次第、下記案内をお願いします。

-------------------------------------------

③宅建免許更新時の対応について

以下に更新申請中の有効期限経過後の対応について記載します。

事前にご確認の上、ご準備をお願いします。

1)「更新申請中の有効期限到来」に関する考え方について

→宅地建物取引業法の中に、免許の更新の申請があった場合において、従前の免許有効期間の満了の日までに更新許可がおりない場合は、
<従前の免許は、当該有効期間満了後も、その処分がなされるまでの間効力を有する>という定めがあります。(宅地建物取引業法第3条第4項)

有効期限到来後の免許の有効性について議論が生じた場合の参考にして下さい。

2)「御社の宅建免許番号や免許有効期間が記載されたもの」について
例:宅地建物取引業者票、各種契約書、重要事項説明書、従業者証明書 等

→現在のままで有効期限が到来すると「有効期限が失効した状態」になってしまいます。
なので、「更新申請中」などの追記・補記を行うようことをお勧めします。
※他社事例では、有効期限の所に「更新申請中」というテプラシールを活用されているケースが多いです。
数的にご負担が大きいのは「従業者証明書」です。お早目に手配いただくことをお勧めします。

→免許更新が完了すると、免許番号・有効期間が以下の通り変更になります。
免許更新完了後は、すぐに免許番号や有効期間が記載された媒体について、更新の対応が必要です。

 現在の免許番号:国土交通大臣(○○)第〇〇〇〇号/平成○○年○○月○○日から令和○○年○○月○○日まで
更新後の免許番号:国土交通大臣(○○)第○○○○号/令和○○年○○月○○日から令和○○年○○月○○日まで

※更新審査の完了時期は、定期的に進捗確認をしても読めないことが多く、突然審査が完了します。
その為、更新完了後に新しい業者票を手配したりするのでは、時間がかかり過ぎてしまう可能性があります。
他社事例では、先に更新後の免許情報を記載した新業者票や新従業者証明書等を発行しておき、それらに一旦更新前の情報を記載したテプラシールを貼って(新情報を)隠しておき、更新が完了したら、各自テプラシールを剥がして、最新の情報にしていただく・・・といったケースもございます。

以上です。

よろしくお願い致します。

-------------------------------------------

また、下記のような質問が想定されるためこちらも一読してください。

【質問①】
新たな更新免許が下りた後、仲介サイト等の免許番号を修正するのが時間がかかってしまい、タイムラグが生じてしまう。
それは宅建業法上問題ないか。また、問題がある場合、どのような対応が必要か。

【SGの回答】
更新免許が下りた際、すべての表示を更新するのに時間がかかる場合、
関東地方整備局では「一切のタイムラグなく変更するようにとまでは強制できず、できるだけ早く対応して下さい」と案内をしています。
(照会先:関東地方整備局 クサノ氏 2020年1月照会)

ちなみに、同業他社では、関東地方整備局との間で免許日の事前調整を行った上で、その日付で一斉にHP等の免許番号表示が変わるように、予めHPの設定をされているケースがあります。
※関東地方整備局に事前にお願いをすることで、役所内の審査目途がたった段階で、免許付与前に当社に一報をいただき、実際に新たな免許を交付してもらう日(免許日)を事前調整することができます。

【質問②】
更新前の免許番号で契約をしている場合、改めて新しい免許番号で再契約を結ぶ必要はあるか。

【SGの回答】
会社間の契約によるものなので、役所から強制するものではない(会社ごとにご判断を)とのこと。
(照会先:関東地方整備局 クサノ氏 2020年1月照会)

ちなみに、同業他社では、免許番号が更新になっただけで契約書を締結しなおすような負担が生じないように、契約書に免許証番号を記載する時は、「契約締結時点の免許証番号」という表記をしていたり、
契約内容変更時のルールを定める条文において、「本契約内容(第○条に掲げる免許証番号を除く)に変更が生じた場合は~」と、変更発生時にお知らせをする事項の中から対象外にされていたりします。

(投稿日:2022年8月24日)

★その他Q&A集

従たる事務所として登録していない事務所を物件の販売チラシに掲載していいのか?(2017/3/13)

【先方からの質問】
1点ご教示お願いしたくご連絡です。
 
弊社では、基本的に各部門毎に宅地建物業の事務所届出を行っておりますが、
宅地建物業の事務所として届出を行っていない部門(「戸建て住宅事業室」と言います。)も
存在しています。その部門においては、別の届出事務所部門名(コンサルティング事業部)で、
宅建業に絡む契約等々しているのですが、届出を行っていない部門(戸建て住宅事業室)名にて
販売チラシ等々を作成している事実があります。この点につき、業法違反とならないかを
確認したくご連絡です。
 
具体的には、以下PDFを添付させていただきます。
 1.パンフレット(添付P2)
 2.折込チラシ(添付P3~4)
 3.「スーモ」での告知(添付P5~7、※インターネット)
 4.「三井不動産リアルティ(三井のリハウス)」での告知(添付8~9)
いずれも届出を行っていない部門(戸建て住宅事業室)名となっておりますが、問題が生じないかを
確認させていただければと思います。
 
なお、添付P1に「一般媒介契約書」も添付しています。同様に「戸建て住宅事業室」名で
契約書に記名・捺印しておりますが、媒介契約書は単なる契約者(≒宅建業に絡むことではない)との
認識から問題ないと判断しておりますが、あわせて念のため確認させていただければと思います。
 
大変お手数かけますが以上何卒よろしくお願いいたします。
 
【SGからの回答】
お世話になっております。
サポート行政書士法人の増野です。
以下、ご質問をいただいた件について、ご連絡です。
今回ご質問をいただいた内容は、以下の2点で検討する必要があるかと思います。
 
①そもそも行っている行為が「宅地建物取引行為」「宅地建物取引業」に該当するか否か
②上場グループ会社・宅建業者の責任において、一般消費者からみた観点で適切と言えるか否か
 
①で、宅地建物取引業等に該当するのであれば、これらの行為については、 「宅建業務を行う部門として届出を行っている拠点の、従業者証明書を保持している担当者が行う必要がある」ということになるかと思います。
また、もし許認可や宅建業法に関わらない整理になったとしても、 ②で、社会一般から見て不適切だったり疑義が生じる可能性があるのであれば、御社として実行すべきではない(やり方を見直すべき)…という会社判断に至る可能性があるかと思います。
 
①について: 宅建業に該当するか否かは、基本的に、「対象物件×取引行為」で整理されます。
今回のように、「自己物件×売買」については、基本的に、宅地建物取引業に該当し、宅建業に関する「営業行為」(勧誘・説明)についても、宅建業として行う行為となりますので、 物件情報をWEB上やチラシに掲載するといった販売促進活動も、「宅建業の営業行為」に該当すると考えられます。
他の宅建業者が仲介に関わるからといって、宅建免許が不要になる(非該当になる)訳ではなく、宅建業法の規制がなくなる訳でもありません。
※例外的に、「反復継続性がない」等、「業」としての該当性がない場合は、宅建業に該当しないことも。
※詳しくは、東京都手引き( http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/sinsei/takken_menkyo.pdf  )をご参照下さい。
※一般的な論点として、念の為、関東地方整備局建政部建設産業第二課不動産第一係 村田氏(男性)に確認済み。
 
<以下、東京都宅建手引きより抜粋>
cid:image002.jpg@01D29C2E.A1607E90
 
上記をふまえ、今一度検討する必要があるかと思います。
ちなみに、同部署(戸建て住宅事業室)について、あえて宅建事業所としてカウントしない(したくない)ご事情などありますか?
 
一般的に考えると、上記のような関わり方をされている拠点は、宅建事業所にカウントするケースがほとんどですので、何かご事情があるのかと気になりまして。
 
なお、上記については、あくまでも一般的なお話になりますので、今回の個別具体的な法的な解釈がからむお話は、別途顧問弁護士等にご確認いただく方が良いかと思います。
 
②について: こちらについては、御社の背景(上場グループである社会的影響力/社会的責任が大きい立場にある)をふまえて、会社としてご判断いただく必要があります、というお話です。
いただいたチラシ資料を見ると、例えば、以下のような表示は、「宅建免許番号」とともに、「戸建て住宅事業室」の記載が並んでいて、 一般消費者から見ると、当該事業部にて宅建業者として適切に対応してくれることが期待される気がします。 このような表示の場合、基本的には、併記されている部署で宅建免許を取得しているケースが一般的かと。
cid:image006.png@01D29C2E.A1607E90
 
以上です。
なお、宅地建物取引業については、法令の他、以下の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」をご参考いただければと思います。
また、前提として、当方は行政書士法人になりますので、法的な見解や解釈についてはアドバイス出来ませんので、その点ご理解下さい。
個別具体的な法的な解釈が必要な場合は、別途、顧問弁護士の方等にご相談いただければと思います。 よろしくお願い致します。

 

政令使用人が同じフロアを共有している他社の政令使用人にも就任することができるか(2018/4/3)

【SGからの回答】
①政令の使用人の兼業
政令の使用人の要件として、常勤性が求められています。
この常勤性の定義ですが、例えば会社Aと会社Bのオフィスが同じビル内にある場合、両オフィスにおいて常勤性が認められます。
ゆえに、両会社の政令の使用人となる(兼任する)ことができます。
 
ただ、役所としては望ましい状態ではなく、
あくまで同ビル内までなら常勤性を認めるということです。
(照会先:関東地方整備局 マツザキ氏 2018年4月照会) ②証明書の必要の可否について
専取で拠点間異動が生ずる人に関して(既に専取として届出済み)
新たに身分証明書と登記されていないことの証明書は必要ありませんが、
これは、元々専取であった人が政令の使用人になるパターンなど、
代表者、役員、政令の使用人、専取のいずれかとして既に登録されており、
そのいずれかに新たに就任する場合でも同様となります(証明書は必要ない)。

業者票の専任の取引士一覧の修正について(2020/6/30)

【先方からの質問】
宅建業に関する「専取一覧(宅建業者票)」の掲示に関して、運用ルールと罰則有無などを確認してほしい。
【SGからの回答】
宅建業法では、「宅建業者票(標識)」に関して、
「公衆の見やすい場所に、宅建業者である旨の標識(業者票、報酬額表)を掲示しなければならない」とあります。
掲示内容に変更があった場合、変更日から速やかに(概ね2週間以内に)その変更を反映しなければなりません。
役所が指摘するタイミングとしては、事務所の変更届や更新時に添付する写真で変更が反映されていない場合です。
念のため、変更時の対応が遅れた場合(または対応がなかった場合)の措置について、一般的なケースとして関東地方整備局に照会も行いましたが、
補正指示を出して対応をしてもらい、特段罰則等は設けていないとのことです。
※ただし、長期にわたってあまりにも悪質な放置があった場合は、業法に基づいた罰則が科せられることもあるそうです。
 
以上です。
 
いずれにしても、 専取一覧(宅建業者票) は公表性の高いものとなりますので、間に合わない場合もテプラや紙で掲示を差替えるなどの対応は必要かと思います。
また、他社の事例で、査察が入ったという話もありますので、変更が発生するたびに業者票もすぐに変更することをお勧めします
 

『宅建業の従業者(専任の取引士を除く)が複数の従たる事務所に所属してはいけない』という制約はあるか?(2022/4/6)

【先方からの質問】
1、売買契約締結にあたり、物件を売買する事務と、契約にあたり重要事項説明等を行う業者が属する事務が異なる場合がありますが、こちらは同じ会社内であれば特に問題はないとの認識でよろしいでしょうか。
(たとえば、九州支店にて管理している社有地を中部事業本部の営業担当のお客様に売却する場合、不動産売買契約書は九州支店長名(印鑑)での取り交わしになりますが、 重要事項説明は中部事業本部の取引士が行うといったケースです。
 
2、事業本部名で事務を届出している拠点において、不動産売買契約時に、届出事務名ではなく、本部内の支店名・支店長印で締結することは問題ないでしょうか。
(たとえば、千葉支店の社有地を売却する場合、たる事務として登録している千葉事業本部名義で本部長印で行うのではなく、
 千葉事業本部内にある(統一在地)千葉支店・千葉支店長印にて契約締結を行うケースです。)
 
【SGからの回答】
法令上明記されている制約はありません。
 
ただ、関東地方整備局としては、専任の取引士を除く宅建業の従業者が 複数の従たる事務所に所属するケースは想定内です。 (照会先:関東地方整備局 コヤナツ氏)
理由として、「宅建業の従業者」の定義を考慮する際に、専任の取引士のような専任性や常勤性は関係ないためです。
 
上記を踏まえて、複数の従たる事務所に所属する場合の実務上の注意事項をまとめましたのでご確認ください。 (照会先:関東地方整備局 クサズミ氏)
 
・従業者名簿について →それぞれの事務所の従業者名簿に、氏名等を記載するかたちとなります。
 
・携帯する証明書の数について →法律上の明記はないため、一つでも、所属する事務所の数に応じて、証明書番号を変えて複数発行しても構いません。一つの証明書を携帯する場合は、それぞれの事務所の従業者名簿に同じ証明書番号を記載します。
 
・専任の取引士の設置ルールにおける、事務所ごとの母数人数について →専任の取引士は事務所ごとに業務に従事する者の5/1の割合で設置が必要なため、複数の事務所に所属している場合は、それぞれの事務所の母数人数にカウントします。
 
・営業担当の名刺について →名刺について、所属する事務所ごとに使い分ける等は関東地方整備局としては特段求めていません。
 
<<<「宅建業の従業者」 の定義について>>>
 
ちなみに、①でご説明した「宅建業の従業者」 の定義については、法令上明確な定義はありませんが、宅地建物取引業法第48条に記載があります。
本条文によると、「宅建業の従業者」=「従業者証明書を携帯している者」=「従業者名簿に記載されている者」となります。
「従業者証明書を携帯している者」の範囲については、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」42Pに記載があり、
こちらをあわせて読み解くと 「宅建業の従業者」= 「法第31条の3第1項で定める従事者の範囲(業務に従事する者)」+「代表者、非常勤の役員、単に一時的に事務の補助をする者」 ということになります。
ここで専任性や常勤性というキーワードは特段登場しないことになります。 なお、「法第31条の3第1項で定める従事者の範囲(業務に従事する者)」については、 以下に記載がありますので、ご参考ください。
 
・宅地建物取引業法 第31条の3
・宅地建物取引業法施行規則 第15条の5の3
・宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 10P
 
<参考資料>
宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001413564.pdf
 

4.営業所を追加する場合の初回案内★案内書あり★

すでに宅建業の登録をしている会社が営業所を追加する場合、下記のように多数の確認項目があります。

<確認したいポイント>
①事務所の形態・レイアウト (NG:バーチャルオフィス・仮設の事務所 等)
②事務所の権原(転貸借の場合、所有者の同意が確認できる書面をもらっているか 等)
③宅建業業務を継続的に行うことができる事務所かどうか(テナント表示・デスクの有無 等)
④政令使用人及び専任の取引士は確保できているか

上記に関してはチェック項目も多いため、確認漏れを防ぐために案内書を作成しています。
案内書はiXmarkの以下フォルダに保存しているので、適宜使用してください。

<フォルダ場所>
Z:\☆実務フォルダ\新宿進行中案件\★増野\★宅地建物取引業

(投稿日:2022年8月23日)

2.事務所に関する様々な事例(関東地方整備局の場合)

その①:他社と事務所の入口を共有する場合

「来客目線で誤解が生まれない」環境が整っていれば、他社と入口を共有することは可能。
(照会先:関東地方整備局 不明 2015年11月照会)

【想定される質問】
グループ名会社と入口を共有しており、その入口に複数社の業者票を掲げたい。

【SGの回答】
・一般の消費者の方からの「分かりやすさ」と「情報管理」について、気を付けてほしい。一般の消費者の方からの「分かりやすさ」については、
例えば、どの会社がどのライセンスを取得しているか(どの業者票がどの会社のものなのか)分かりやすいように、会社ごとに業者票等をまとめて掲示したり、業者票の大きさやフォント等が大きく異ならないように統一したり・・・等。

・「情報管理」については、通常受付は一時的な来客対応窓口として使用するところ、例えば、グループ会社の他社社員がいる受付付近で、顧客の情報等を扱ったり、機密情報を扱った執務を行ったり、不適切な使用方法にならないよう注意してほしい。(グループ会社とはいえ「別会社」になるため)

・ちなみに、「同じビル内の階数移転」の場合、日ごろ使っているもので、階数まで表示しているものがあれば、そちらも変更する必要があるため要注意。

例)従業者証明書/社員証/名刺/メールなどの署名
各種契約書/各種帳簿類/会社ホームページ 等

その②:他社との間仕切りを可動式の壁(スライディングウォールやロールスクリーン)にしたい場合

固定式の壁でないとNGだが、スライディングウォール沿いにロッカー(可動式でないもの。高さ制限なし。)を並べて、開かないようにする事が可能であれば、完全な間仕切り壁でなくても可能。
(照会先:関東地方整備局 マツザキ氏 2017年12月照会)

【想定される質問】
移転先の事務所は他グループ会社も入っているテナントだが、
他グループ会社との間仕切りはスライディングウォールになっている。完全な間仕切り壁にする必要はあるか。

【SGの回答】
・そもそも、では、一つの事務所を他の法人等と使用している場合の要件として、
「両社間に、高さ180㎝以上のパーテーションなど固定式の間仕切りがあり相互に独立していること」がある。
(東京都の手引き http://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.jp/sinsei/takken_menkyo02.pdf ) 

image.png  
 
・「固定式」とは、「動かそうと思っても動かせない状態」で、左右の可動性、ロールスクリーンのような上下の可動性のあるものは、NG。
※間仕切りの上部(180㎝以上)が空いているパーテーション等であっても、床に固定がされていて、
「動かそうと思っても動かせない状態」の維持が必要とのことです。
 
・また、透明ガラスなど、となりの事務所が見えるような壁はNG。
 
・ただし、可動式のパーテーション沿いにロッカーを並べて開かないようにすれば、完全な間仕切り壁でなくても可能。
 

その③:同一フロアに同社の従たる事務所が2つある場合

間仕切り壁などの設置は不要だが、それぞれの事務所の範囲が明確に分かるよう、
机の島を分け、間に書棚や植木等を置いた上で、事務所名の掲示が必要。
(照会先:関東地方整備局 オオサト氏 2020年6月照会)

【想定される質問】
1フロアに弊社内の従たる事務所が2つあった場合、
その2事務所について、それぞれ下記のようなそれぞれ別の出入り口、
パーテーション・壁が必要になってくるという認識でよろしいでしょうか。
(同じ入口は共有できない、必ず間仕切りがあることが必須 等)

【SGの回答】
・関東地方整備局の見解+事務所名の掲示例(天井から「○○支店」という表示を吊り下げる/事務所名が記載されたプレートを置く 等)
 を伝える。

・固定電話は事務所ごとに必ず必要となる。

・なお、過去の事例として、机の島と島の間にパーテーションを設置し、
 「〇〇支店/〇〇支店」と記載したA4用紙を貼り付けるかたちで対応したこともある。

・ただし、1フロアに複数拠点を構えることは稀なため、平面図等をもとに事前相談をしたほうがいい。

その④:事務所が増床するが、増床部分は他社と共有する場合

共用部分の増床に関する届出は基本的には不要だが、
届出の必要性の有無を考える基準として、<御社を訪れる顧客に誤解を与えるか否か>で判断をしてほしい。

(照会先:関東地方整備局 オオサト氏 2021年2月照会)

【想定される質問】
事務所が増床することになったが、増床部分は「グループ会社との連携スペース」を使用目的としており、
グループ会社の社員も出入り可能な共用部分となる。この場合でも届出は必要か?

【SGの回答】
・例えば、<に関する契約を行う場合>は届出した方が良い例となる。
 宅で提出する事務所平面図は一般人がいつでも閲覧できるようになっており、契約する個人がクーリングオフの適用か否かを調べる際の確認に使用されることがある。
 そのため、上記に該当する場合は、誤解を生じさせないためにも届出は行ったほうが良いのではないか。
(共有部での契約がクーリングオフの対象になるか否かは図面ごとに役所へ照会)

・共用部分で行うことのできる行為・できない行為は特に規定されていない。
 セミナーや相談会などで共有部分を使用することに関しては、関東地方整備もよくあるケースとして認識しており、
 このような行為を共有部分で行うからと言って、増床の届出を強要することは無いというのが関東地方整備局の見解。

その⑤:ショールームを開設する場合、従たる事務所の届出は必要か

契約行為を行わない場合は、事務所の登録は必要ないが、
宅地建物取引業法施行規則第19条の1に定める標識の掲示が必要となる。

(照会先:関東地方整備局 クサズミ氏 2021年6月照会)

【想定される質問】
新しくショールームを開設し、土地情報の掲示や営業活動を行いたい。
その場合、事務所として届出が必要か。

【SGの回答】
・従たる事務所として登録が必要になる場合は<契約行為を行い>且つ<継続的に業務を行うことができる施設を有する場所>であるため、
 契約行為を行わない場合は、届出は不要となる。

・また、掲示すべき標識の「取り扱う宅地建物の内容」が特定できない場合は空欄で良い。(照会先:関東地方整備局 ヨシノ氏 2021年8月照会)

 

 

(投稿日:2022年8月23日)

専任の取引士の専任性・常勤性について

<「専任」の考え方について>※宅建業の解釈から抜粋
「専任」とは、原則として、宅地建物取引業を営む事務所に常勤(宅地建物取引業者の通常の勤務時間を勤務することをいう。)して、専ら宅地建物取引業に従事する状態をいう。

ただし、当該事務所が宅地建物取引業以外の業種を兼業している場合等で、当該事務所において一時的に宅地建物取引業の業務が行われていない間に他の業種に係る業務に従事することは差し支えないものとする。 
→ここでいう「一時的」の考え方は明確に法律等で定められていないため、会社ごとの判断になる。(SGで判断は出来ない。)

また、宅地建物取引業の事務所が建築士事務所、建設業の営業所等を兼ね、当該事務所における宅地建物取引士が建築士法、建設業法等の法令により専任を要する業務に従事しようとする場合及び個人の宅地建物取引業者が宅地建物取引士となっ ている宅地建物取引業の事務所において、当該個人が同一の場所において土地家屋 調査士、行政書士等の業務をあわせて行おうとする場合等については、他の業種の業務量等を斟酌のうえ専任と認められるものを除き、専任の宅地建物取引士とは認められないものとする。  
 参考:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html (国土交通省)

―――――――――――――過去に照会を受けた事例――――――――――――

ケース① 専取が他社の社外役員や非営利団体の理事に就任している場合
→ 常勤性や専従性を阻害するような業務をしていない(=非常勤)のであれば、専任の取引士の要件に該当する。(東京都手引き記載)
(照会先:関東地方整備局 クサズミ氏 2020年12月照会)

ケース② 専取が非営利団体の代表理事に就任している場合
→ 東京都では、 「代表」名のつく役職の場合は、非常勤・勤務実態に関わらず、政令や専任の取引士の要件に該当しない 。
(照会先:東京都 不動産業課免許担当 タカヤマ氏 2020年12月照会 )

ケース③ 専取が他社からの出向者の場合
→ 専任性・常勤性の要件が満たされていれば就任できる。出向証明書など出向者であることを証明する書類は不要。
※取引士証の勤務先変更の手続きは忘れずに行うこと。(この時に出向証明書が必要になる)
(照会先: 関東地方整備局 コヤナツ氏  2022年3月照会 )

ケース④ 専取が宅建業以外の業務を兼務している場合
→他業務が繁忙期の時でも宅建業務に支障をきたさない状況が保たれていれば問題はない。
(照会先: 関東地方整備局 不明  2020年12月照会 )

 

 

(投稿日:2022年8月17日)

 

2.更新申請時の注意点

三井不動産株式会社の更新申請時、多数の補正事項があったため今後の対策のために当時の指摘事項をまとめました。更新申請担当者は必ず目を通してください。

●申請書

<第四面>

・旧姓の名前の後ろにかっこ書きで現在の名前を記載していたが、現在の名前のみを記載するように変更指示あり

・旧字体なのに、常用漢字で記載されている(対→對)

・取引士証番号の県番号が違う

<添付書類8(宅建業に従事する者の名簿>

・専取番号が違う

・旧字が常用漢字になっている

●直近の決算書

・損益計算書に売上高欄の横にかっこ書きで宅建業における手数料と売却金額を記載する。

・売上原価欄の横にかっこ書きで宅建業における購入金額記載する

※これは、売上高が業経歴書の金額と一致しない場合に記載する。

★東京都手引き、決算書の写しに関するページに記載あり。

●専任の宅地建物取引士証

・取引士証の有効期限が申請日と近いものは、新しいものを差し替える必要がある(今回は申請日から1ヶ月以内に切れる人は差し替え対応をした

・略歴書の住所と取引士証の住所が違う

●身分証明書

・破産者の項目がなかった

※禁治産者、準禁治産者の宣言の通知を受けていないこと、破産者に該当しないことの

2つの記載があることが必須

●登記されていないことの証明書

・本籍の漢字が一字抜けている(越谷市→越ヶ谷市)

●略歴書

・略歴書添付漏れ

・専取ではないのに、専取と記載がある(消去必要)

・政令と専取を兼任しているのに、専取の記載がない

●事務所の写真

・事務所入口に「会社名+事務所の正式名称」が記載されていない

・複合機が写っていない