専任取引士の設置母数である「業務に従事する者」

まず、宅地建物取引業法第31条の3において、専任取引士の設置義務を定めています。更に、宅地建物取引業法施行規則第15条の5の3(法第31条の3第1項の国土交通省令で定める数)において、その設置人数について、以下の通り定めています。
「当該事務所において宅地建物取引業者の業務に従事する者の数に対する宅地建物取引士の数の割合が5分の1以上となる数とする。」(一部略)

つまり、専任の宅地建物取引士の設置基準(母数)となるのは、「宅地建物取引業者の業務に従事する者の数」です。
「宅地建物取引業者の業務に従事する者」5名に1名以上の割合で、専任取引士を設置する必要があります。

従業者証明書の発行対象・従業者名簿の記載対象である「従業者」

一方で、「従業者証明書」「従業者名簿」については、宅地建物取引業法第48条(証明書の携帯等)において、

>従業者証明書については、
「~従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、~」と、

>従業者名簿については、
「~その事務所ごとに、従業者名簿を備え、従業者の氏名、~」と記載されており、

ここでは、「従業者」という考え方が基準となっています。

「業務に従事する者」と「従業者」は、別の考え方

注意する必要があるのが、専任取引士の設置基準となる「業務に従事する者」と、従業者証明書や従業者名簿に記載する「従業者」とは、別の考え方で、厳密には、対象者の範囲が異なるという点です。

「業務に従事する者」は宅建業の解釈にて下記のとおり範囲が決められています。

なお、大手不動産会社のほとんどは宅建業以外の業務の取り扱いをしているため、宅建業のみ従事している者は少ないです。
この場合の考え方として、顧客の立場から客観的に見て宅建業に従事していると判断されるような従業者は、「業務に従事する者」に該当すると判断されます。

一方、「従業者」はより広範囲の人が対象となっています。

※ここでいう「一時的に業務に従事するもの」の「一時的」の定義は明確に決まっていません。(例えば、〇か月間までの業務までが「一時的」に該当する等)
そのため、個別具体的な話になると関東地方整備局へ相談する必要があります。

基本的に、「業務に従事する者」は、臨時職員等は除きますが、「従業者」は、臨時職員等も含む考え方なので、、「従業者」の方が対象範囲が広くなっています。

ただ、大手不動産会社では、取扱いを分ける管理負担を考慮し、大は小を兼ねる発想で、<専任の取引士の設置基準=より範囲の広い「従業者」と設定>し、管理しているケースがあります。

なので、この点の見直しをすることで(厳密に「業務に従事する者」の数を算出する)、専任取引士の設置基準となる母数を減らすことができる可能性があります。

ちなみに、千葉県では「業務に従事する者」「従業者」の対象範囲を整理した表があります(公開資料)。

<千葉県:「業務に従事する者と従業者の該当範囲の違い」>

https://www.pref.chiba.lg.jp/kenfudou/tetsuzuki/takuchi-menkyo/documents/2015_13x.pdf

※千葉県の資料ではありますが、関東地方整備局クサノ氏にも、本内容と同見解である旨確認済。(2019年9月照会)