従たる事務所として登録していない事務所を物件の販売チラシに掲載していいのか?(2017/3/13)

【先方からの質問】
1点ご教示お願いしたくご連絡です。
 
弊社では、基本的に各部門毎に宅地建物業の事務所届出を行っておりますが、
宅地建物業の事務所として届出を行っていない部門(「戸建て住宅事業室」と言います。)も
存在しています。その部門においては、別の届出事務所部門名(コンサルティング事業部)で、
宅建業に絡む契約等々しているのですが、届出を行っていない部門(戸建て住宅事業室)名にて
販売チラシ等々を作成している事実があります。この点につき、業法違反とならないかを
確認したくご連絡です。
 
具体的には、以下PDFを添付させていただきます。
 1.パンフレット(添付P2)
 2.折込チラシ(添付P3~4)
 3.「スーモ」での告知(添付P5~7、※インターネット)
 4.「三井不動産リアルティ(三井のリハウス)」での告知(添付8~9)
いずれも届出を行っていない部門(戸建て住宅事業室)名となっておりますが、問題が生じないかを
確認させていただければと思います。
 
なお、添付P1に「一般媒介契約書」も添付しています。同様に「戸建て住宅事業室」名で
契約書に記名・捺印しておりますが、媒介契約書は単なる契約者(≒宅建業に絡むことではない)との
認識から問題ないと判断しておりますが、あわせて念のため確認させていただければと思います。
 
大変お手数かけますが以上何卒よろしくお願いいたします。
 
【SGからの回答】
お世話になっております。
サポート行政書士法人の増野です。
以下、ご質問をいただいた件について、ご連絡です。
今回ご質問をいただいた内容は、以下の2点で検討する必要があるかと思います。
 
①そもそも行っている行為が「宅地建物取引行為」「宅地建物取引業」に該当するか否か
②上場グループ会社・宅建業者の責任において、一般消費者からみた観点で適切と言えるか否か
 
①で、宅地建物取引業等に該当するのであれば、これらの行為については、 「宅建業務を行う部門として届出を行っている拠点の、従業者証明書を保持している担当者が行う必要がある」ということになるかと思います。
また、もし許認可や宅建業法に関わらない整理になったとしても、 ②で、社会一般から見て不適切だったり疑義が生じる可能性があるのであれば、御社として実行すべきではない(やり方を見直すべき)…という会社判断に至る可能性があるかと思います。
 
①について: 宅建業に該当するか否かは、基本的に、「対象物件×取引行為」で整理されます。
今回のように、「自己物件×売買」については、基本的に、宅地建物取引業に該当し、宅建業に関する「営業行為」(勧誘・説明)についても、宅建業として行う行為となりますので、 物件情報をWEB上やチラシに掲載するといった販売促進活動も、「宅建業の営業行為」に該当すると考えられます。
他の宅建業者が仲介に関わるからといって、宅建免許が不要になる(非該当になる)訳ではなく、宅建業法の規制がなくなる訳でもありません。
※例外的に、「反復継続性がない」等、「業」としての該当性がない場合は、宅建業に該当しないことも。
※詳しくは、東京都手引き( http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/sinsei/takken_menkyo.pdf  )をご参照下さい。
※一般的な論点として、念の為、関東地方整備局建政部建設産業第二課不動産第一係 村田氏(男性)に確認済み。
 
<以下、東京都宅建手引きより抜粋>
cid:image002.jpg@01D29C2E.A1607E90
 
上記をふまえ、今一度検討する必要があるかと思います。
ちなみに、同部署(戸建て住宅事業室)について、あえて宅建事業所としてカウントしない(したくない)ご事情などありますか?
 
一般的に考えると、上記のような関わり方をされている拠点は、宅建事業所にカウントするケースがほとんどですので、何かご事情があるのかと気になりまして。
 
なお、上記については、あくまでも一般的なお話になりますので、今回の個別具体的な法的な解釈がからむお話は、別途顧問弁護士等にご確認いただく方が良いかと思います。
 
②について: こちらについては、御社の背景(上場グループである社会的影響力/社会的責任が大きい立場にある)をふまえて、会社としてご判断いただく必要があります、というお話です。
いただいたチラシ資料を見ると、例えば、以下のような表示は、「宅建免許番号」とともに、「戸建て住宅事業室」の記載が並んでいて、 一般消費者から見ると、当該事業部にて宅建業者として適切に対応してくれることが期待される気がします。 このような表示の場合、基本的には、併記されている部署で宅建免許を取得しているケースが一般的かと。
cid:image006.png@01D29C2E.A1607E90
 
以上です。
なお、宅地建物取引業については、法令の他、以下の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」をご参考いただければと思います。
また、前提として、当方は行政書士法人になりますので、法的な見解や解釈についてはアドバイス出来ませんので、その点ご理解下さい。
個別具体的な法的な解釈が必要な場合は、別途、顧問弁護士の方等にご相談いただければと思います。 よろしくお願い致します。

 

政令使用人が同じフロアを共有している他社の政令使用人にも就任することができるか(2018/4/3)

【SGからの回答】
①政令の使用人の兼業
政令の使用人の要件として、常勤性が求められています。
この常勤性の定義ですが、例えば会社Aと会社Bのオフィスが同じビル内にある場合、両オフィスにおいて常勤性が認められます。
ゆえに、両会社の政令の使用人となる(兼任する)ことができます。
 
ただ、役所としては望ましい状態ではなく、
あくまで同ビル内までなら常勤性を認めるということです。
(照会先:関東地方整備局 マツザキ氏 2018年4月照会) ②証明書の必要の可否について
専取で拠点間異動が生ずる人に関して(既に専取として届出済み)
新たに身分証明書と登記されていないことの証明書は必要ありませんが、
これは、元々専取であった人が政令の使用人になるパターンなど、
代表者、役員、政令の使用人、専取のいずれかとして既に登録されており、
そのいずれかに新たに就任する場合でも同様となります(証明書は必要ない)。

業者票の専任の取引士一覧の修正について(2020/6/30)

【先方からの質問】
宅建業に関する「専取一覧(宅建業者票)」の掲示に関して、運用ルールと罰則有無などを確認してほしい。
【SGからの回答】
宅建業法では、「宅建業者票(標識)」に関して、
「公衆の見やすい場所に、宅建業者である旨の標識(業者票、報酬額表)を掲示しなければならない」とあります。
掲示内容に変更があった場合、変更日から速やかに(概ね2週間以内に)その変更を反映しなければなりません。
役所が指摘するタイミングとしては、事務所の変更届や更新時に添付する写真で変更が反映されていない場合です。
念のため、変更時の対応が遅れた場合(または対応がなかった場合)の措置について、一般的なケースとして関東地方整備局に照会も行いましたが、
補正指示を出して対応をしてもらい、特段罰則等は設けていないとのことです。
※ただし、長期にわたってあまりにも悪質な放置があった場合は、業法に基づいた罰則が科せられることもあるそうです。
 
以上です。
 
いずれにしても、 専取一覧(宅建業者票) は公表性の高いものとなりますので、間に合わない場合もテプラや紙で掲示を差替えるなどの対応は必要かと思います。
また、他社の事例で、査察が入ったという話もありますので、変更が発生するたびに業者票もすぐに変更することをお勧めします
 

『宅建業の従業者(専任の取引士を除く)が複数の従たる事務所に所属してはいけない』という制約はあるか?(2022/4/6)

【先方からの質問】
1、売買契約締結にあたり、物件を売買する事務と、契約にあたり重要事項説明等を行う業者が属する事務が異なる場合がありますが、こちらは同じ会社内であれば特に問題はないとの認識でよろしいでしょうか。
(たとえば、九州支店にて管理している社有地を中部事業本部の営業担当のお客様に売却する場合、不動産売買契約書は九州支店長名(印鑑)での取り交わしになりますが、 重要事項説明は中部事業本部の取引士が行うといったケースです。
 
2、事業本部名で事務を届出している拠点において、不動産売買契約時に、届出事務名ではなく、本部内の支店名・支店長印で締結することは問題ないでしょうか。
(たとえば、千葉支店の社有地を売却する場合、たる事務として登録している千葉事業本部名義で本部長印で行うのではなく、
 千葉事業本部内にある(統一在地)千葉支店・千葉支店長印にて契約締結を行うケースです。)
 
【SGからの回答】
法令上明記されている制約はありません。
 
ただ、関東地方整備局としては、専任の取引士を除く宅建業の従業者が 複数の従たる事務所に所属するケースは想定内です。 (照会先:関東地方整備局 コヤナツ氏)
理由として、「宅建業の従業者」の定義を考慮する際に、専任の取引士のような専任性や常勤性は関係ないためです。
 
上記を踏まえて、複数の従たる事務所に所属する場合の実務上の注意事項をまとめましたのでご確認ください。 (照会先:関東地方整備局 クサズミ氏)
 
・従業者名簿について →それぞれの事務所の従業者名簿に、氏名等を記載するかたちとなります。
 
・携帯する証明書の数について →法律上の明記はないため、一つでも、所属する事務所の数に応じて、証明書番号を変えて複数発行しても構いません。一つの証明書を携帯する場合は、それぞれの事務所の従業者名簿に同じ証明書番号を記載します。
 
・専任の取引士の設置ルールにおける、事務所ごとの母数人数について →専任の取引士は事務所ごとに業務に従事する者の5/1の割合で設置が必要なため、複数の事務所に所属している場合は、それぞれの事務所の母数人数にカウントします。
 
・営業担当の名刺について →名刺について、所属する事務所ごとに使い分ける等は関東地方整備局としては特段求めていません。
 
<<<「宅建業の従業者」 の定義について>>>
 
ちなみに、①でご説明した「宅建業の従業者」 の定義については、法令上明確な定義はありませんが、宅地建物取引業法第48条に記載があります。
本条文によると、「宅建業の従業者」=「従業者証明書を携帯している者」=「従業者名簿に記載されている者」となります。
「従業者証明書を携帯している者」の範囲については、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」42Pに記載があり、
こちらをあわせて読み解くと 「宅建業の従業者」= 「法第31条の3第1項で定める従事者の範囲(業務に従事する者)」+「代表者、非常勤の役員、単に一時的に事務の補助をする者」 ということになります。
ここで専任性や常勤性というキーワードは特段登場しないことになります。 なお、「法第31条の3第1項で定める従事者の範囲(業務に従事する者)」については、 以下に記載がありますので、ご参考ください。
 
・宅地建物取引業法 第31条の3
・宅地建物取引業法施行規則 第15条の5の3
・宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 10P
 
<参考資料>
宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001413564.pdf